| ■Home > Interview > "Printer in Wonderland" 第二回 |
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年も明けて慌ただしくなり始めた木曜日の夕方、西麻布にある山本 昌さんの仕事場を訪ねました。
野 :「ちょっと前に写真展に行ったんですけど、そこで文字通 り”斜に見て”分析というか印画紙見たりしてたら、好意的に熱心に見てると勘違いされちゃって。ギャラリーの人ともコミュニケーションが噛み合わなくなって。困ったなと。それでも帰り際に名前を書いてきたら、なんかとんちんかんな字でDMが来るようになっちゃって。僕の字が悪いのかもしれないけど、どう読んだらこうなるの?って感じで。やっぱり、ダメだこりゃって。笑っちゃいましたけど。」
野 :「山本さんはやっぱりフランス語を使っているくらいだから、フランスが 一番好きな国なんですか?」 山 :「そうだね。これを語り出すと長いんだけれども。」 野 :「聞きたいですね。是非。」 山 :「僕、趣味がサイクリングなんですよ。ずーっと10代の頃からやってて。結構フランスが盛んで。で、フランスというのに憧れを持ってて。当然大学で第二外国語でフランス語取ってて、みたいな。」 野 :「僕は勝手に山本さんのイメージはイタリアだと思ってました。じゃあ 南仏かなあ。上の方と下の方ではどちらがお好きなんですか?」 山 :「僕はねえ フランスはパリしか知らないし、日本国内の旅行でも都市に行くのが、都市が好きなの。自然とかそういう所に行くんじゃなくて街が好きでねえ。」 野 :「その都市でどんな事をするんですか?例えば写 真を見たり、絵を見たりとか」 山 :「そんな努力はしない(笑)。努力は次に何食べようかって(笑)。」 野 :「じゃあ行ってブラブラ。」 山 :「別に何もしない訳じゃないけど、街のその”手垢”みたいなもの、そういう感じが好きでねえ。街っていうのは、経済活動とか田舎にはない、そういう歴史みたいなものがあるでしょ、そういう空気みたいなものも好きでね。」 野 :「都市というと見なきゃいけないような場所が沢山あって強迫観念みたいなものがあるので、取り立てて何もないような郊外なんかが僕は好きですね。パリではどんな所を見てるんですか?」 山 :「なんかさ、街でも猥雑な感じとか。そういうきれいなものではない所の方が人間臭い。」 野 :「自転車でまわったんですか、パリは(笑)?歩きとか地下鉄とか?」 山 :「(笑)そうね パリに行くとすごい距離歩きますよ。」 野 :「凱旋門からサンジェルマンデプレまで毎日歩くって感じですよね、パリって。お気に入りの場所はあるんですか?」 山 :「やっぱりサンジェルマンデプレ辺りはいい空気してるしね。」 野 :「カフェで。」 山 :「カフェはあんまり行かないけど。」 野 :「あ、そうか。山本さんはコーヒー飲まないですもんね。」 山 :「行くとしても裏のカフェで夜にちょっと一杯ひっかけてとか、その程度。」 野 :「そういう時は何を飲むんですか?」 山 :「いつも冬が多いんですよ。その時は”Vin Chaud(ヴァンショー)”といって温めたワイン。」 野 :「赤?」 山 :「そう。」 野 :「ホットワイン?いわゆる熱燗みたいに温めただけなんですか?」 山 :「そうそう。ただワインを温めて、レモンか何かをちょこっと入れたりして。」 野 :「どんな感じになるのかな。」 山 :「おいしいよ。むこうの冬は本当に寒いからね。」 野 :「食べ物がおいしいですよね。何かお気に入りの食べ物はあるんですか?」 山 :「昔から憧れてた食べ物っていうのがあってね。最近日本でもあるんだけど”Gratine(グラチネ)”っていうの。平たく言えばオニオングラタンスープ。オニオンスープにパンのっけて、チーズのっけて、オーブンで焦がして。あれがまだ10代の頃のまだ憧れてた頃の食べ物でさ。」 野 :「冬だとおいしそうですね。でもあまり高くなさそうですど(笑)。」 山 :「うん。ちゃんとしたレストランで出るものではない。映画を観た後とか劇を観た後とかに、それとちょっとワイン飲んで帰ろうかみたいな。」 野 :「オペラとかコンサートとか行ったりするんですか?」 山 :「いやいや。パリに何しに行ってるんだろう(笑)。何もしてないなあ。ただ飯食ってブラブラして。」 野 :「自転車はやっぱりフランス製?」 山 :「細かくいうと一応オーダーなんで。部品類はフランス製が多いかな。」 野 :「ロードレースみたいなタイヤの細いやつ?」 山 :「うん。いろいろ。」 野 :「何台くらい持ってるんですか?」 山 :「うんとね、4台か5台かな。」 野 :「普段乗ってるんですか?」 山 :「いや、この仕事を始めてあまり乗らなくなっちゃった。休みもねえ、はっきりしない感じだし。昨年からまた自転車引っぱり出してきてね。でももう基礎体力がね(笑)。昔は200キロとか行けたのに、そのうち100キロ、60キロ、60キロも無理になってきちゃって(笑)。」 野 :「心臓が弱りますよね、運動しないと。若い時は結構色々と行ったんですか?」 山 :「分解して電車に乗ってその場所に行って乗るって感じで、結構あちこち。」 野 :「どんな所に行ったんですか?」 山 :「大体、峠越えが多いんで。平坦な所走ってるだけじゃつまらないでしょ。」 野 :「峠!峠は面白いですか?」 山 :「登るのは大変だけど下るのは面白い。あんまり長い旅ってのはしてないよね。」 野 :「移動の手段というよりも走りたい所を走る為の自転車。」 山 :「せいぜい4、5日。だからキャンピング車みたいのでずーっと移動して行くってのは僕はあまり好きじゃなかった。あれだと自転車がどうしても移動手段になっていっちゃうんで。」 野 :「走り屋なんですね。」 山 :「(笑)僕にとって自転車に乗るっていうのはさ、普段とは違う生活を楽しみたいんだよね。」 野 :「実用性よりも趣味性が強いんですよね。」 山 :「だからそういう自転車で通勤はしたくないし。」 野 :「言わば贅沢な乗り方をしたいって感じですか。」 山 :「(笑)。」 私は見た目から、「山本さんはイタリアンのシェフみたい」だから「イタリア好き」と思い込んでいました。すみません。いつもの穏やかな表情からは知る事の出来ない クセとこだわりが潜んでいました。咄嗟にとぼけて嘘っぱちを書いてくるあたり、一 筋縄ではいきません。東京京橋の生まれで高度成長期の町の変わり様を見てこられたとの事。興味深いお話がもっと伺えたのに時間切れでお暇しました。 また今度、昭和30年代、40年代の話を聞かせて下さい。 どうもありがとうございました。 2002年1月17日 ラ フォトパラディにて (文責 野々下) |